「ケイゾウさんは四月がきらいです」大人もたいがい四月がきらいです
こんにちは。
入学、進級、就職などドキドキの春です。
でも、入社○十年の大人にとったら、繁忙期、新人教育、よくわからないプロジェクトの開始…と愉快ならざる出来事も多い春ですね。
なぜか、そんな大人が読むと「ああ…わかる」となってしまう児童書があります。
市川宣子「ケイゾウさんは四月がきらいです」
幼稚園にすんでいる、おじいちゃんニワトリのケイゾウさん
四月、新入りのうさぎ「みみこ」が幼稚園にやってくるところから物語は始まります。
ぽっちゃりで口の悪いみみこ。でも園児たちには大人気で、みみこが来てからケイゾウさんはいつも後回しにされてしまいます。
子どもたちからはひどい扱い(彼らは可愛がっているつもり)をされ、みみこからは「あたしのほうが子どもたちにはモテますからね」と上から目線で見られ、頼りのももこ先生も園児たちやみみこに気を取られ、ついついケイゾウさんは放ったらかしに…
今日帰りに一杯どうですか!と思わず声をかけたくなるような、哀愁漂うケイゾウさんです。
この一冊の中でもありとあらゆるとばっちりを受けるケイゾウさんですが、「ケイゾウさんはサーフィンがきらいです」は本当に秀逸な一編。
大雨の日、ももこ先生は小屋からみみこを避難させた後、園児たちのトラブルでケイゾウさんのことを忘れてしまいます。
小屋の中にはみるみる雨水がたまっていき、エサ箱に乗ってなんとかやり過ごすケイゾウさん。飼われている小屋からエサ箱ごと外へ押し出されて・・・
この後の展開がなんとも不憫でございます。
この本の中では、ケイゾウさん、みみこ、園児たちが一緒に過ごす一年間が描かれますが、最終章のタイトルは「ケイゾウさんは三月がきらいです」。
なんと三月もきらいなんですね。
三月がきらいな理由はちょっとせつなくて、ほろりときてしまいます。
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↓連想読書オススメ
今井恭子「キダマッチ先生! 1 先生かんじゃにのまれる」
奥さんに逃げられたカエルのおいしゃさん
カエルのキダマッチ先生は、ひょうばんの名医です。
しかも、治療費は激安!
だからキダマッチ先生のところには、アリンコのじいさんやトカゲのおくさん(トカゲのおくさんは治療費も払わない・・・)など、色んな患者さんがやってきます。
親切ではたらきもののキダマッチ先生ですが、先生のおくさんには不評で、「こんないなかにはあきあきしたわ」と出て行かれてしまいます。
(お金もかせげませんしね)
治療してあげたのに、患者さんたちにはそんなに感謝されているふうもなく、タイトルにあるように患者にのまれるトラブルも・・・。
ケイゾウさんと一緒に、味わい深いおじさん(おじいさん)の児童書、ぜひ読んでみてください。
junaida「怪物園」 空想×空想で海の底へ
こんにちは。
今日は、私も子どもも大好きな絵本のご紹介です。
福音館書店「怪物園」junaida
幻想的で可愛い絵柄。ユニークで細かい描き込み。独特の深みのある色づかい。
最近junaidaさんの絵がとても好きになり、自分のために「怪物園」を買ったのですが子どもがすごく気に入って小学校の朝読に毎日持って行ってしまい、読みたいときに手元にない状態が続いていました。
春休みになってよかった。
ボロボロになる前に返ってきました。
ある日、「怪物園」を読んでいた子どもが言いました。
「空想ってなに?」
私は、「怪物園」でいうとどこが「空想」部分か説明しようとして、あれ・・・?となりました。
「怪物園」では、街を練り歩く怪物たちがいる世界が現実。
子どもたちが段ボールバスで走る世界、バスタブを船にして旅立つ世界が「空想」の世界。
でも、怪物園から抜け出してきた怪物たちも、空想ではないですか。
「くじらぐも」でも、「おおきなおおきなおいも」でも、子どもたちは空想で空を飛びます。私の魂の一冊「少年時代」(マキャモン)でも、何の説明もなく子どもたちは空を飛んでいました。
そう、子どもの空想といったら空を飛ぶ、みたいなところがありますよね。
でも、「怪物園」では、子どもたちは海の底で怪物たちと出会います。
空想に空想を掛け合わせると、空じゃなくて深い海の底へ、というのが面白いなと思いました。
私は、表紙にいるアヌビスみたいな怪物がお気に入りです。
あなたは、どの怪物がお好きですか?
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ちなみに、私が大好きな月刊誌「たくさんのふしぎ」の4月号は、junaidaさんが挿絵を描いていて、なんとポスター付きの豪華版です!
チョコレートができるまでの長い長い歴史や、おいしいチョコレートを作るのがどれだけ大変かわかるエピソードが盛りだくさんです。
チョコレートのもつ神秘的なイメージや極上の味わい、舌の上でとろけるあの感じと、junaidaさんの挿絵がとても合ってます。
いつも思いますが、絵本は画集だと思って買うと安いですよね。
「たくさんのふしぎ」は雑誌なので770円なんです。
この値段でjunaidaさんの絵が手元におけるなんて・・・
「育児の百科」を卒業します
はじめまして。
このブログは、元々児童書・絵本好きな一人のワーキングマザーが個人的にビビッときた本を紹介するブログです。
「子供に本を選ぶ」という大義名分を得て児童書コーナーに入り浸るようになったものの、今では「子が読むか読まないかではない、私が好きかどうかだ」というスタンスで思う存分好きな本を購入し、楽しんでいます。
ということで、「親(私)の好きな本」「子供受けがよかった本」が入り混じった形になりますが、よろしければお付き合いくださいませ。
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さて、3月といえば卒業。
変わりばえのしない生活を送る私ですが、この度、一冊の育児書を卒業しました。
7年前子どもを出産したとき、とある方に「前は出産祝いに必ず『育児の百科』贈ってたんだけどね、絶版だからね~」と言われて気になって、古本屋を回って200円くらいで購入しました。
私が手に入れたのはハードカバー箱入りのものですが、現在は文庫(全3冊)で流通しています。
初めての育児、不安で不安で、色々な育児書を買ったり借りたりして読んでは憂鬱になっていた頃でした。
大抵の育児書は親には厳しいので、「そんなまめにできたら苦労せんわ・・・」となることが多いのですが、「育児の百科」は親にも子にも優しいのです。
当時、夜まとまって寝ない子どもを持った私は疲れきっており、離乳食が始まる頃は絶望しかなかったのですが、「離乳への道はひとつではない」という章を読んで心が軽くなったのでした。
(特別な料理は必要ない、大人の料理から赤ちゃんの食べられるものを取り分けるというような内容。離乳食に何時間もかけるより、赤ちゃんを外へ連れて行こうと書かれています)
一冊を通して読むと、赤ちゃん(子ども)も一人の個性を持った人間である、というスタンスが貫かれていることがわかります。
大人だって好き嫌いがあるのだから、子どもに好き嫌いがあって何が悪いのか、とか。
ごはんを食べてくれないと悩む母親に、「小食でも人間の生活は、何のさしさわりもない」とか。確かに言われてみればそうだよなあ、と思うのです。
一歳のお誕生日の章である「お誕生日ばんざい」は、泣ける名文なのですべての一歳児の親御さんに読んでほしい。母子手帳の付録にしたらどうかと心から思います。
おちつきのない子は「活発で創造的な活動家」、ききわけのない子は「自己主張が強く個性的で、情動が抑えられるようになるとおもしろい人物になる」、感じやすい子は「世界を美しくしてくれるのは、そういう人だ」・・・
ふだんはなかなかそうは考えられなくても、時々松田先生の言葉を思い出して支えられることも多いです。
そんなふうに褒められることって、まずないですもんね。
「育児の百科」は小学校入学くらいまででほぼ終わりなのですが、改めてぱらぱらめくって読み返すと、それぞれの年齢の子どものいきいきした様子が写真とともに描かれています。
小さいけれどひとりの人間である子どもを尊重し、愛してきた松田先生の心が伝わってくるような読み物だなあと思うのでした。
松田先生、悩み事があって「育児の百科」を開くたびに「私のこと見てたのかな?」と思うほど的確で、心から納得できる回答をたくさん書いてくださってありがとうございました。
新書の「私は赤ちゃん」「私は二歳」も面白いので是非。